我々の身の回りの環境には多様な微生物が存在しています。これらの微生物は、それぞれの生合成遺伝子/経路を用いて、多様な代謝産物を生産します。同一の化合物を作り出す際には、各々よく似た(共通の)生合成遺伝子/酵素を利用することが多いですが、中には全く異なる生合成遺伝子/酵素を利用するものが存在し、その生合成経路にも多様性が存在することが明らかにされつつあります。
しかし微生物の種類は膨大であるため、それらの中には依然として見過ごされている生合成経路が潜んでいると考えられます。新規な生合成経路に存在する未知な酵素・タンパク質機能の発見は、学術・産業の双方にとって重要であり、人類にとって有益であります。
そこで我々は、遺伝子情報や遺伝子工学、高度な分析技術等を用いることで、その潜在する生合成経路(世界で誰も解明していない!)を明らかにし、多様な微生物のより深い理解を目指しています。
タンパク質を構成するアミノ酸は、生物種ごとにその生合成経路の有無が異なります。植物や微生物はそれぞれ生合成経路を持っており、炭素源・窒素源といった有機化合物から、自前でアミノ酸を作り出すことができます。一方でヒトを含む動物は一部のアミノ酸生合成経路を持たないために、栄養素として食事を介しての摂取が必要です。アミノ酸の市場規模は2020年で980万トンであり、年々その需要は高まり、今後もその需要の拡大が予想されています。以上から、アミノ酸生合成機構に関する新たな知見は、発酵生産や抗菌剤開発といった応用展開への重要な基盤にもなり得ます。
そこで我々は、微生物を対象にしてアミノ酸生合成経路の多様性に着目して研究を行っています。